研究内容
シリコン・パワー半導体におけるCMPに関する研究
CMPとは化学的機械的研磨(Chemical Mechanical Polishing)の略です.図1にCMPの装置概略図を示します.CMPは微粒子による機械的除去作用と化学的作用を重畳させることで,効率的に平坦面を形成することができます.そのためCMPは,半導体プロセスにおいて絶縁膜の平坦化や配線プロセス,素子分離工程などに適用されております.本研究室ではCMPにおける材料除去メカニズムの解明のほかに,温度分布などのプロセスモニタリング手法の確立や研磨微粒子の挙動観察,そして光学的フーリエ変換法によるポリシングパッド表面解析手法に関する研究を行なっております.
図1 CMPの装置概略図
フラーレン複合型スマート研磨微粒子を中心とした
研磨微粒子設計に関する研究
ナノクラスターやナノ微粒子には,日常触れている固体材料と異なる性質があります.例えば炭素の場合,フラーレンの一種であるC60(以後,フラーレンと記載)と呼ばれる物質があります.フラーレンは,トルエン溶媒に可溶であることや光学的性質,電気的性質など含め,グラファイトやダイヤモンドでは出現しない特異的な性質を有しています.そこで本研究ではナノ微粒子におけるこれらの特異な性質に着目し,スラリーに適用させることでCMPにおける新規研磨材への適用を目指しています.図1にコロイダルシリカスラリーに水酸化フラーレン水溶液を混合させたときの動的光散乱スペクトルを示します.ここではコロイダルシリカ微粒子に起因するピーク値が,4nm程度シフトしております.しかしながら,DLSにおける微粒子のサイズ変化における妥当性や吸着構造は未解明ではありますが,水酸化フラーレンがコロイダルシリカ微粒子表面に吸着しているものと考えられます.この水酸化フラーレンを複合化した際,サファイアCMPにおける材料除去レートが約2倍程度まで向上します.また,フラーレンに紫外線照射や高温・高圧を加えることにより新規炭素相が形成されることに着目し,水酸化フラーレンをコロイダルシリカ微粒子などのコア微粒子と組み合わせて光照射することで新規にフラーレン複合型スマート研磨微粒子の作製に取り組んでいます.この新規研磨微粒子においては,図2に示すように微粒子の粒子径,反応性,硬度を微粒子のメインパラメータとして仮定し,コア微粒子のサイズを変化させるや,フラーレン分子に水酸基の付加反応やフラーレン分子自体を物質変換させることにより,CMPにおける機械的作用や化学的作用などを独立に制御可能な機能性研磨微粒子の開発を行っております.
図1 フラーレン複合微粒子の作製
図2 フラーレン複合型スマート研磨微粒子の開発コンセプト
マイクロパターンパッドに関する研究
半導体プロセスによりシリコン上に微細なパターンを形成し,めっきをすることでマイクロ金型を作製します.このマイクロ金型に樹脂フィルムを高温で圧着させることにより,図1に示すようなマイクロパターンパッドが完成します.マイクロパターンパッドは,シリコン上の微細なパターンを反映しており図2に示すようなピラミッド形状の微細な構造を有しております.ここでは半導体プロセスにおけるフォトマイクのマスクパターンを選択することにより,パターン寸法や形状を変化させることできます.
超伝導援用による磁気浮上中空加工技術に関する研究
この加工法は,図1に示すように刃物が取り付けられた磁石を超伝導体により空中に浮上させトラップさせた状態で回転し,被加工物をステージにより移動させることにより中空加工を行うことを特徴としております.ここでは工具による干渉が極力低減されるため,図2に示すように従来加工では困難な中空加工の実現を目指します.
ナノスケールの極微小な空間におけるライブ3D現象観測法の研究
局在光波のエバネッセント光(別名:見えない可視光)の応用により,ナノサイズ物質を高コントラスト高分解能観察法で,独自の携帯型実験装置で実現します.以下が考えられる活用例です.
- 次世代の省エネルギーのSiC基板などの難しい加工の現象を可視化することにより,加工メカニズムを解明し,難加工にならないように貢献すること
- 医薬の研究での細胞と原薬粒子との作用・現象を直接患者さんのところにおいて可視化・解析すること
- 無重力環境でのナノスケール現象を(携帯型のため)宇宙ステーションへの運搬・設置により観測する
その他にも発展していきます.
Figure 5.1: Optical system and portable apparatus
Figure 5.2: One of observation cases; growth phenomena of a silver nano-wire
製造現場用高速非接触ナノ計測法に関する研究
光波・光子の不確定性を考慮としない幾何光学だけでは,ナノスケール計測の実現が困難のため,非接触で高速にナノメートルの精度の計測を実現するには,光波の回折,局在などの現象を応用します. 携帯型装置の研究開発も進めています.
また,ISO, JISにはまだ定められていない100 nm以下の単粒子径を個々算出する計測法の研究にも展開しています.
Figure 6.1: Optical system for diffraction gauge method
Figure 6.2: One of designed fundamental optical system for nano-scale measurement
Figure 6.3: One of the ideas for single nanoparticle size measurement
光を応用した観測しながらナノスケール加工の実現
次世代にも加工の精密さ・複雑化・材質融合化の要求が引続く中,光子エネルギーの考え方および原子・分子のイオン,電場との相互作用により,観測しながらナノスケール加工法の確立を目指します.
Figure 7.1: One of concepts for nano-patterned metal printing and etching
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